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データ公開によるパワーシフト

2012/05/11 20:58

 

「『オープンであること』が支配力を再分配する。」 (「パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ」P282、ジェフ・ジャービス著、NHK出版) ソーシャルメディアにおいて消費者は、以前は秘匿していたはずのプライベート情報を大胆に公開し始めている。「どこで、どんな商品を、いくらで買ったか。他の商品と比較してその商品の使い心地はどうか、商品に満足しているか」など、以前はわざわざ「消費者調査」を実施し、質問して回答を集めなければ得られなかったようなデータが、今やウェブ上に大量にあふれる状態になっている。すでにウェブ上に公開された情報をていねいに集めれば、あらためてレガシーな「消費者調査」をする必要はなくなっている。 「価格変動、価格差別化、経済指標、商品や店のトレンド。こうした買い物データを小売店の手から取り上げ、その情報を集合としての買い物客の手に渡す---かつて秘密だったその他の公開データと同じように。すると力が消費者に移る。」(同上) 消費者ひとりひとりがソーシャルメディアを通じて自分の買物行動をオープンにしていくと、やがてそれらをアグリゲートし「買い物データベース」として提供するようなサービスが出てくるだろう。従来、流通チェーンはPOSをはじめとする販売データシステムを構築してきたわけだが、これとは逆に、消費者が自分の購買データをウェブに公開することによって、POSなど「販売」側と対抗するようなオープンな「購買データシステム」が出来上がることが考えられる。この購買データシステムによって消費者は、たとえばこれまであまり知り得なかった「売れ筋商品、死に筋商品」などの傾向実態を知って、自分の買い物に活かすことができるようになるだろう。このようにして、消費者のバイイングパワーは強化されるだろう。 これまで消費者は、企業、行政、メディアなどから、さまざまな手法でその意識と行動を計測されデータ化されてきた。そうして集められたデータはすべてが公開されるわけもなく、消費者は自分に関するデータを集められながら、それらデータすべてにアクセスし利用することはできなかった。消費者は「データ収集の対象」であっても、「データを利用するユーザー」ではなかった。自分たちのデータであっても、それを自由に使うことはできなかった。だが、ウェブは消費者に自分たちのデータをオープンにすることを可能にし、それらのデータ集積は、やがて企業、行政などが保有するデータシステムと対抗的に成長していくだろう。


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がん情報報告制度、オープンガバメント、パワーシフト

2012/05/06 23:24

 

この連休もようやく昨日から5月らしい晴天になった。ところで当方、あいにく体調が悪く、自宅蟄居状態の日々を過ごしていた。どこへ出歩くということもなかったが、雨模様の合間に、妻と新宿へ映画「裏切りのサーカス」を見に行った。この映画は良かった。淡々とシーンを重ね上げる寡黙な作りの映像に好感を持った。ストーリーよりも絵(映像)が良いので、ただじっと見とれていた。あとは自宅で音楽を聞き、本を読み、部屋の片づけをやり、石神井公園を散歩し、あれこれ事業の今後を考えるうちに連休は終わった。 そのあいだも社会は動いている。厚労省は癌患者情報の医療機関による報告義務づけ構想を発表した(日経5月2日「がん情報 全国一元化 病院に登録義務、厚労省検討 」)。 国が集めたがん情報は当面、国立がん研究センターが一元管理する。患者数や生存率の統計はホームページなどを通じて一般市民でも入手できるようになる。将来的にはがんになった際、自分に適した治療法や医療機関を調べる情報源とすることを厚労省は検討している。患者や病院は国や都道府県を通じて情報を提供してもらう。例えば、データベースを通じて症状ごとに治療経験が豊富な病院がいち早く分かれば、患者の早期治療につながる効果が期待できる。 とのことであるが、これまで正確な癌患者数など基礎データ把握さえおこなわれていなかったとは・・・驚かざるを得ない。遅まきながらもデータを収集し公開することに異存はないが、データ公開の方法は「国立がん研究センター」など政府系サイトを通じてではなく、ぜひ海外の「オープンガバメント」のやりかたを研究してもらいたい。すなわち政府系サイトを作るのではなく、データを一般に公開する方法を採用すべきだ。


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医療評価と患者の感情表出ワード

2012/04/27 21:20

 

前回エントリ「患者エンゲージメント」で「患者の感情の指標化」ということに触れたが、最近、このことをあれこれ考える機会が多い。特に私たちが注目してきた患者体験ドキュメントの基本性格というものは、「患者感情の表出」を抜きに考えることはできない。 私たちはこれまで、患者体験ドキュメントを患者が体験した「事実」を中心に見てきた。従来、どうしても「闘病記」という言葉で表されるドキュメントには、ある種の過剰な思い入れがつきまとい、それは時として「センチメンタルな物語」という形式に矮小化されてしまい、患者が体験した「事実」の客観的な意味を見失わせてしまいがちであった。 そうであるからこのブログでは、事実の連続体として患者体験ドキュメントを捉え、とりわけ固有名詞に注目し、なるだけセンチメントから距離をおくことを再三表明してきたわけだ。やがて、その成果はdimensionsというツールに実を結ぶ事になる。dimensionsは固有名詞をキイとして事実を抽出し集計するデータ・ツールである。


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患者エンゲージメントの時代

2012/04/19 19:57

 

昨年後半頃からだろうか、患者エンゲージメント(Patient Engagement)という言葉が、海外、特に米国の医療関係ブログやメディアなどで盛んに使われはじめ、今やバズワードになっている。だがその中身ははっきりしない。明確な定義もないままに、勝手に言葉だけが一人歩きしているような具合である。 調べてみると、どうやら2006年に米国広告リサーチ協会が新しい広告効果指標としてこの「エンゲージメント」を提唱したことが発端になっているようだ。マスメディア時代のレガシー広告指標に代わるものとして「エンゲージメント」が登場したわけだが、これは従来のともすればクライアント発想に立つ「リーチ、フリーケンシー、GRP」など効果指標を、消費者の主体的な態度としての「ブランドへの愛着、きずな」などブランドと消費者の関係性に関わる「感情の指標化」をめざすものであった。 このようにもともと広告やコミュニケーションの新しい効果指標として登場した「エンゲージメント」だが、その後、マーケティング調査会社などで医療分野でも「患者エンゲージメント」として研究開発がおこなわれてきた。たとえば、世論調査で有名なギャラップ社も患者エンゲージメント調査に積極的に取組んでいる。ギャラップ社の場合、ピッカー研究所が開発した患者経験調査をもとに数年前から米国政府が実施している全国病院患者経験調査(HCAHPS)に、独自の患者エンゲージメント指標を加えた調査サービスを医療プロバイダーに提供している。 このギャラップ社の調査サービスにおいても、やはり患者の医療機関に対する感情的な結びつきを明らかにすることが調査目的に挙げられている。これらは従来の満足度調査や経験調査に代わる、新しい消費者(患者)調査として構想されているようだ。つまり、患者や消費者のブランドに対する態度測定尺度は「満足-経験-エンゲージメント」と移動してきており、それにともない高度な患者エンゲージメントを創造することが医療機関の主要マーケティング課題になってきているとされる。


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患者ドキュメントによる医療評価

2012/04/13 19:43

 

先週は。今週は花吹雪。花もも踏み越えて行くが男の生きる道。いささか古いか・・。 ひたすら闘病ユニバースの可視化とデータ収集に励んできた4年間だったが、dimensions、CHART、TDRと開発は進んできた。最近、もう一度私たちが目指してきたことをあらためて確認しなおす必要があるような気がしている。今の時点で、私たちが目指してきたことを短く言えば、それは「患者ドキュメントによる医療評価」ということではないかと思う。これを実現するためには、とにかく患者ドキュメントを大量に集めなければならなかった。そしてデータ量が確保されたら、次にそれを使って「評価」というものを生成しなければならない。これは「データを評価へ変換すること」とも言える。 dimensionsはその変換のための基本ツールであったが、それはまだ「評価」自体を提示するものではなかった。ユーザーの多様な目的に即して自由にデータを抽出するツールであり、特定の「評価」を出力するためのものではなかった。開発当初は、このような多目的ツールであることがユーザーのニーズに合致するものだと想定していた。 そして先月から本格的に取り組んでいる「がん闘病CHART」では、だんだん「評価」へ踏み込んだ出力というものをイメージするようになってきている。それはユーザーの自由度にある種の制限を設けて、一定のフレームでデータを見ることによって実現されるものだ。データの解釈が全面的にユーザーに任されているような状況では、「評価」はユーザー自身の手に委ねられている。たとえばマーケティングや製品開発などプロフェッショナルな仕事をしている人達であれば、本来なら医薬品や治療法など、ある事象に対する「評価」はツールを使ってデータを検討しながら自分自身で行うべきだろう。またそのような技量と経験を持つがゆえに「プロ」であるとも言える。


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開発中「がん闘病CHART」のフィルタリング機能

2012/04/05 19:42

 

現在、クチコミ検索エンジン「がん闘病CHART」デモ版を開発中(上図:サイト数等ダミー)。まだデザインなどはラフなイメージ段階だが、ネット上に公開されたがん闘病サイトのうち「乳がん胃がん肺がん、大腸がん」について、「検査・診断、治療法、薬、病院、闘病生活」の各ジャンルで、患者が最も話題にしているクチコミ・キイワードをランキング・チャート形式で可視化する。 チャートインしているキイワードをクリックすれば、バーティカル検索エンジンの検索結果が表示される。さらに、検索結果をそれぞれのジャンルに応じた絞りこみ項目でフィルタリングすることができる。このフィルタリング項目の設定が、このサービスの肝になると考えている。 たとえば薬CHARTでは「副作用、費用、処方」のフィルタリング分野を用意している。「副作用」分野を見ると「吐き気、嘔吐、アレルギー反応、発熱、食欲不振、倦怠感、下痢、便秘、腹痛、脱毛、口内炎、白血球減少、手足のしびれ、皮膚や爪の黒ずみ、貧血、関節痛」など、かなり細かくフィルタリング項目を設定している。検索結果画面には各フィルタリング項目ごとのヒット件数も表示される。一口に「副作用」といっても、実際の患者体験に基づくクチコミをここまで細部まで可視化するのは、おそらくはじめての試みではないかと思う。


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仮想対談:「 ビッグデータ、Patient Portal」

2012/04/01 12:15

 

客)ようやく、春らしくなってきたね。 主)今朝、石神井公園を歩いたが桜はまだだ。新宿と違って、こっちは梅はだいたい終わったね。あちこちでウグイスが鳴いていたな。 客)ところで、TOBYOの収録サイト件数も3万4千件まで来たね。当初、「闘病ユニバースは約3万サイト」と推定していたけれど、もうそれを越えてしまった。 主)今の時点で、だいたい5万サイトまで見えている。昨年あたりから、ブログで闘病体験を書く人は増えていて、中身も充実したものが多いような気がする。最近、特に印象に残ったものでは、先日、3月11日名古屋ウイメンズ・マラソンを走った乳がん患者の「メモ」というブログがある。これは質・量ともにすばらしい。 客)タイトルが「メモ」と素っ気ないが、中身はすごいね。乳がん患者になった人に、まず読むようにすすめているブログだ。 主)最近の闘病ブログは全体としてかなりクオリティが上がってきている。自然発生的にネット上に生まれた「闘病ユニバース」だが、やっぱりそれ自体の歴史というものがあり、進化してきているのかもしれないね。 客)誰かが最初に開発した闘病ドキュメントのフォームがテンプレートとして利用され、やがて、次々に新しい工夫が加えられるような「継承と発展」みたいなことが起きているのか。


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TDR:TOBYO Document Research

2012/03/29 19:49

 

ようやく新宿にも春がきた。新宿御苑は梅が満開だが、ところどころ桜も咲き始めた。今なら、梅と桜を一挙両方観る贅沢が味わえる。昼休みにお弁当を持って行こう。 さて現在、先のエントリでも触れたように「がん闘病CHART」の開発を進めているが、実は同時に昨年来やり残していた仕事に再度取り組んでいる。dimensions開発の過程でカスタム・ソリューション・サービスを構想していたが、そのまま放置してしまっていたのだ。 dimensionsは、TOBYOプロジェクトで可視化した闘病ユニバースのデータをさまざまな観点から見ることができる汎用ツールである。ユーザーの目的に応じて、ユーザーがいろいろな使い方ができるように作ってあるのだが、「ツールよりも、結論をまとめたレポートが欲しい」という声もあちこちで耳にした。 また「ソーシャル・リスニング」ということ自体がまだ一般の企業には馴染みがなく、困惑する向きも少なくなかった。「リスニング」の基本文献であるステファン・ラパポートの”Listen First”だが、電通ソーシャルメディアラボが翻訳し、やっと来月4月12日に出ることになった。とにかくこういう基本テキストが出てくれなければ、なかなか社会的認知も進まないのであるが、だからと言って、これでただちに認知や理解が一挙に進むわけでもない。


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患者学習ツール: 「がん闘病CHART」

2012/03/23 21:05

 

ある日突然、医師から「がん」を告知されたらあなたはどうするだろうか。まず突然の告知に驚き戸惑うだろう。その様子は「がん」のどの闘病ブログにも記されている。次に、あなたは医師から告げられた病名や病態や病期を調べるために、とりあえずそれらの言葉をGoogleで検索するだろう。あるいは、何をどのようなキイワードで検索すればよいかということ自体がわからず、途方にくれるかもしれない。そしてネット上には膨大な量の医療情報、闘病ドキュメントがあふれており、ひと通りそれらに目を通すだけで徹夜仕事になるかも知れない。そして次の日、あなたは書店や図書館で自分の病気のガイドブックを紐解くかも知れない。 おおむね、患者が最初に取る行動は以上のようなものだろう。これら一連の情報収集活動が何を意味するかを考えると、それらは「自分の病気についての学習行動」と言うこともできるだろう。さらにこの「学習行動」の中身をよく見てみると、その「学習」は自分の病気に関する医療分野の専門用語や固有名詞など「言葉の学習」であることに気づく。つまり患者は、最初にこのように自分の病気についての「基本単語の習得」という問題に直面するのだ。とにかく「基本単語」がわからなければ、Googleで検索することも、誰かに何かを訊ねることもできない。 この初期学習過程で十分な基本単語習得がなされなければ、患者は医療者とコミュニケーションすることができないし、自分の意向に沿った医療を選択することもできなくなる。つまりこの初期学習過程は、実は、その後の「患者の意思決定」のポテンシャルを決定する重要なファクターなのだ。そしてこの学習は、学習一般がそうであるように、誰かに代わってやってもらうことはできず、あくまで患者自身が自分でおこなわなければならない。 だが、患者に与えられた時間は少ない。治療方針を医師と協議するまでに、自分の病気の疾患概要、検査方法、治療法、薬剤など専門用語を習得し、自分の意向と選択方針を明確にしておかねばならない。しかもこれは、告知の衝撃さめやらぬ不安定な精神状態でおこなわれるだけに、余計に患者に取って大きな負担を強いることになろう。


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続々開催される医療ITカンファレンス

2012/03/18 17:34

 

Announcing Medicine X 2012 from Larry Chu on Vimeo. 前エントリでも少し触れたように、ここのところ徐々に「Health2.0」という言葉は、単に特定のイベント興行ブランド・ネームへと格下げされたかのような感が強い。なぜ「格下げ」が起きたかというと、Health2.0以外に多数の医療ITカンファレンスが続々と実施され、さまざまなムーブメントも立ち上がってきているからだ。その中でも、若者中心のスタートアップ企業が大挙結集して注目を集めたのがRock Health主催の“Health Innovation Sumit” で、今年1月サンフランシスコで開催されている。 また、最近注目されているのがこの9月開催される“Stanford Medicine X”。プロモーションビデオ(上)が公開されているが、自分のICD(植え込み型除細動器)データへのアクセスを主張して話題になったe-PatientのHugo Campos氏も参加する予定。 ちなみに、夏までに開催が予定されている主な医療ITカンファレンスは下記の通り。 ●Healthcare Experience Design Conference ●TEDMED ●Sage Commons Congress ●Innovations & Investments in Healthcare ●Mobile Health 2012 ●Digital Health Summer Summit ●Kauffman Life Science Ventures Summit 三宅 啓 INITIATIVE INC.


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